近藤淳也監修『ネットコミュニティの設計と力 つながる私たちの時代』個人的まとめ
ブロガーでアルファツイッタラーのヒデヨシさんをはじめ、各方面から勉強になると評判の良かった、角川インターネット講座の第5巻として発刊され、はてなの近藤さんが監修している『ネットコミュニティの設計と力 つながる私たちの時代』を読んだ。
oreno-yuigon.hatenablog.com以下、個人的に読み返す用のメモとして各章の内容をまとめておく。
第1部 人間の集まるコミュニティを設計する
序章 日本のインターネットコミュニティ ……近藤淳也
- 日本のインターネットコミュニティの歴史は、パソコン通信を前史として1990年代前半に始まり、インターネットの普及とともにホームページ、ブログ、テーマ特化型や仮想のコミュニティなどへと進展し、現在はSNSが主流となっている
- 「実名か匿名か」の議論については、かつてのインターネットコミュニティは「ネット完結型」だったのが、「リアル社会」の人々のインターネットへの急激な流入により「リアル社会接続型」が隆盛し、匿名制から実名制へと取って代わられつつある
- インターネットには場所性があり、それこそがコミュニティを誕生させる条件である
第1章 ソーシャルメディアの発生と進化 ……yomoyomo
- 2ちゃんねるでは投稿者の社会的属性が一律に漂白されていたため、アソシエーションとしての性質が強化された
- mixiにはパソコン通信に通じる、コミュニティを活気あるものにする規範となる「無名の質」があった
- Facebookは大学生名簿という社会関係資本をもとに、こうした質の担保に成功した
- ウェブのパラダイムは「検索」から「ソーシャル」へ、そして「メッセージング」へとシフトしつつある
第2章 恋愛論的コミュニティサイト運営術 ……hagex
- まずはトキメキを演出し、ユーザーを獲得すること
- 人は「イメージ」で物事を捉えるので、そのためには見た目も大事
- 初デート、つまり利用しはじめでがっかりさせない
- ユーザーの欲求を満たし、熱心なファンにする
- マンネリ対策にはサプライズを
- 「利用者を幸せにする」ことが最終目標
第3章 人が集まるコミュニティのつくり方 ……古川健介
- コミュニティはユーザーがつくっていくもの。計算は不確定要素が多すぎて不可能
- だから最初の設計が大事。スタートラインでは改善の余地を残しておく
- まずは書き手を優先。「読み手がいなくても投稿したくなる仕組み」を
- ユーザーを呼び込む方法には、書き手が少なくとも成り立つようにする、事前にユーザーを仕込む、登校が人を呼ぶ仕組みにしておくなど
- 古参や迷惑ユーザーは新規ユーザーを躊躇させる。彼らを来なくさせる工夫が必要
第二部 私たちのこコミュニティはどこへ向かうのか?
第4章 サル学から考える人間のコミュニティの未来 ……山極寿一
- 人間の集団形成は視覚優位
- 人間以外の霊長類にとって不在はそのまま社会的死だが、人間は不在を埋める言葉や技術を発達させてきた
- 動物は環境にタグ付けることで記憶を拡張してきたが、スマートフォンへの依存は記憶を一元化し、結果として人は考えることができなくなる
- 情報収集装置としては、インターネットは利用価値がある
- しかしコミュニケーションの原点はともに時間を過ごすことにある
第5章 情報技術とリアルコミュニティ ……広井良典
- 「遺伝情報→脳情報→脳情報→デジタル情報」へと人間は何重かの情報の外部化を行ってきた。コミュニティの形態ないし様式の変化はそれとパラレル
- コミュニティには農村型と都市型があり、集団主義的で社会的孤立の割合が高いと言われる日本は前者に傾倒している
- 近年は若い世代にも、ローカル思考、土着回帰というべき傾向が見られるようになった
- シンギュラリティのような“離陸”への方向性に対し、「身体性・場所性・ローカル性」への着陸が考えられる
- 日本もドイツやデンマークのように、ローカルなモノの流れが機能するコミュニティ経済を志向するべきではないか
第6章 コミュニティと人の力 ……近藤淳也
- 開発の動機は「こういう仕組みが欲しい」という純粋なものだった
- 初期のフォロワーが生まれるかどうか。それは開発者がビジョンを示せるかどうかにかかっている
- リーダーから経営者へのバトンタッチがうまくいくかどうかが、継続的にコミュニティが発展するための分岐点
- ネットを利用する時間は飽和しつつある。これからはリアルとネットとの「ハイブリッド社会」が訪れるだろう