京田辺から今出川まで歩いたら詩人・尹東柱と再会した

あらすじ

同志社のサークルがやっている、京田辺から今出川までの35kmを朝から晩まで歩くというイベントに参加しました。若者たちとたくさん話せてとても楽しかったです。目的地の同志社今出川キャンパスで韓国の詩人・尹東柱の詩碑と対面し、胸がいっぱいになりました。そのあとid:minemuracoffeeさんがやっていたCafe UGの卒業パーティーに参加して台湾料理を食べました。

イベントについて

同志社のお散歩サークル「ぽち」が毎年この時期に開催している、同志社京田辺キャンパスから今出川キャンパスまでの約35kmを、朝から晩まで歩いて最後にカレーを食べるというイベントに参加しました。そこの会員である知人から案内があり、若者と交流する良い機会だと思い申し込みました。

当日

僕以外にも界隈から3人ほど申し込みがあったはずですが、集合時刻は京田辺に8:50と非常に朝早かったため他には誰も起きることができず来てみれば自分一人でした。参加受付の時に班番号が振られ、自分が割り当てられた班には二人の会員がいたのですが、両者とも気さくに話を振ってくださり、スポーツウェアを着てきたため一見ガチ勢っぽく見えてしまう自分も難なく輪に溶け込むことができました。

開会の挨拶や体操ののち、京田辺キャンパスを出発します。前途は長いですが、指令という名目で参加者同士の交流を図る様々なアクティビティが提案されていて僕は感心しました。僕の班のリーダーは陽気な人だったので、それらの指令を順調にこなしつつ前へ前へと進んでいきました。その過程で、同志社生の生活実態を伺うことができたり、自分と共通の趣味が見つかったり、有益な食べ物情報が手に入ったりと、いろいろな学びと楽しみがありました。午前中の間は僕もおとなしく参加者たちの話を聞いていたのですが、この班のメンバーはどれも個性的でよくしゃべるので面白かったです。

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八幡市久御山町の間あたりにある流れ橋というところで一回目の休憩を取りました。お昼に食べたいものはと聞かれたので「肉」と書いたら写真を撮られました。その前後は木津川の河川敷をひたすら歩いていって、やがて久御山町のイオンでお昼休憩となりました。お昼ご飯に買ったオムハヤシが意外と美味しかったのと、リーダーがおごりとして振舞ってくれたオレンジのアイスバーが冷たくて心地よかったです。

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お昼からは班のメンバーチェンジがあって、また別の参加者と会話しながら歩くことになりました。そのうちの一人である一回生の彼とは、団地や街のつくりとかが好きということで会話が非常に弾み、巨椋池はこうだ向島ニュータウンはこうだ、竹田にはこういう土地があってなどといった話をしたら、相手もたいそう興味を持ってくれて熱心に聞いてくれたので、こちらも熱がこもって界隈の最悪な話などもしてしまいました。彼とは連絡先を交換しそこねたのですが後日またしゃべりたいですね。

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竹田を越えてからは午後からの班のリーダーの会員と色々しゃべりました。街中に入ると道が狭くなるので基本二列となり、必然的に隣の人とよく会話することになるのです。彼女は僕が参加するきっかけとなった案内の主である会員とよく通じているらしく、その周りで読書の機運が生じていた國分功一郎『中動態の世界』をはじめ、学問や大学生活の話を盛んに聞いてきました。それに応じて私もペラペラとこれまで勉強してきたものごとを語っていたのですが、それに対して彼女がすごい、すごいと首を振りつつ聞いてくれるので、喜びつつも自分が調子に乗ってあんまりしゃべりすぎないかと内心焦りました。参加者は同志社の学部生が多く、その中で京大のそれも修士ともなると一目置いて見られるわけですが、このようにして褒めそやされているとだんだんいい気になってくるわけで、こうして承認の過剰摂取状態から中毒状態に陥った人が若い後輩に悪行を働くのだなと思いつつ、自らを戒めるに至りました。僕はまだ理性のある人間で良かったです。

件の竹田を越えて、いよいよ京都も洛内に入ってきました。十条だかの河川敷の階段で休んだところから自由歩行となり、その際勘合貿易みたいに画像の片割れの相手を探すというアクティビティがあったのですが、左前方に座っている会員が自分と同じカズレーサーの写真を持っていたので秒で解決しました。そこからは河川敷をひたすら北上し、僕は鴨川右岸の団地群を見ながら一人で興奮していました。

そのあと五条公園で最後の休憩があり、僕は18時から始まっているCafe UGの卒業パーティーにどのタイミングで抜けていくかなどと考えながら歩いていたのですが、そこで一緒に歩きはじめた三回生の彼が、京都の歴史的な地理への関心が近いのもさることながら、僕自身にも大変興味を持ってくれて、自分が教えた屋台村に今度飲みに行きましょうと言うので参ってしまいました。やはり同志社の大学生ともなると興味関心が似通ってくるものですね。

そうこうしているうちに最後の御所構内を抜けて今出川キャンパスにたどり着きました。そこで彼がふと、今出川キャンパスには韓国人のツアー客がよく観光に来ていると言うものだから、僕はすぐにピンときて尹東柱のことだろうと返すとまさしくその通りだ、集合場所のすぐ近くに彼の碑があると言うので喜び勇んでついていくと、そこには尹東柱の碑が二つ佇んでいたのでした。

尹東柱というのは韓国(朝鮮)の詩人です。延禧専門学校で四年間学んだのち、同志社大学文学部に留学しで英文学を専攻していましたが、民族運動にまつわる過激な思想のかどで当時の警察に逮捕され、福岡刑務所における人体実験のもと30歳に満たぬ短い生涯を終えました。その間に書かれた数十の詩は清冽な言葉で綴られており、韓国をはじめとする青年の心を捉えつづけているが、私もまたそのうちの一人でありました。三年前の冬に海外派遣で短期留学した延世大学校は、まさしく彼が学んだ延禧専門学校の前身なのでした。

そのようなわけで、この折に彼の詩碑に立ち会ったのは僕としては感無量で、歩きづめで股関節が擦り切れたのも忘れて碑の前に立ち、参加者たちを差し置いてしばし感慨に浸りました。とはいえそれも束の間、すぐに集合場所に戻って閉会の挨拶と乾杯を耳にしたあと、明徳館の食堂の中でカレーを食べました。おかわりがたくさんあるので三杯も食べたところ後で後悔する羽目になりました。そこから様々な企画の結果発表がありましたが、午前中の使命の結果とやらが自分の班が案の定一位だったというので、ミニオンの容器に入ったお菓子詰めを景品としてもらいました。僕は容器だけいただきました。

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会員の人が急いで作成したスライドショーを見て一同感傷に浸ったのち、僕は駆け足で出町柳のRiversidecafeへと向かいました。時刻は21時を過ぎ、Cafe UGの閉店までは二時間を切っていたからです。

会場はすでに温まっており、例のパーティーグッズも発火したあとでした。なんでも、それに火を灯すとハッピバースデーソングが流れた後、ハスの花を模した形態が開き、中から人形が現れて、その花びらの上に蝋燭が灯されるというギミックのものだったそうで、動画を見せられましたが非常に面白い代物でした。そこで自分はパンと台湾ビールを飲み食いし、加えて魯味(lu wei)という台湾料理を食べました。滋味があり酒のつまみにちょうど良かったです。飲み足りなかったのでコウリャン酒を注文したところこれが58度の強烈な蒸留酒で、23時までに飲み終わりませんでした。さすがに眠かったのでこの辺で切り上げ、私はふらふらと家へと戻って行きました。風呂だけ浴びてクタクタになって床に就きました。

まとめ

イベントは意外と治安が良く、企画側の会員たちも工夫を凝らして盛り上げることに努め、参加者である同志社の若者たちはどれも気のいい学生で、非常に楽しく有意義な時間を過ごすことができました。来年はおそらく東京にいるので参加することはないと思うけれど、最後に京都の下道を歩き詰める経験ができて良かったです。色々の機会を与えてくれた友人がたに感謝します。