京田辺から今出川まで歩いたら詩人・尹東柱と再会した

あらすじ

同志社のサークルがやっている、京田辺から今出川までの35kmを朝から晩まで歩くというイベントに参加しました。若者たちとたくさん話せてとても楽しかったです。目的地の同志社今出川キャンパスで韓国の詩人・尹東柱の詩碑と対面し、胸がいっぱいになりました。そのあとid:minemuracoffeeさんがやっていたCafe UGの卒業パーティーに参加して台湾料理を食べました。

イベントについて

同志社のお散歩サークル「ぽち」が毎年この時期に開催している、同志社京田辺キャンパスから今出川キャンパスまでの約35kmを、朝から晩まで歩いて最後にカレーを食べるというイベントに参加しました。そこの会員である知人から案内があり、若者と交流する良い機会だと思い申し込みました。

当日

僕以外にも界隈から3人ほど申し込みがあったはずですが、集合時刻は京田辺に8:50と非常に朝早かったため他には誰も起きることができず来てみれば自分一人でした。参加受付の時に班番号が振られ、自分が割り当てられた班には二人の会員がいたのですが、両者とも気さくに話を振ってくださり、スポーツウェアを着てきたため一見ガチ勢っぽく見えてしまう自分も難なく輪に溶け込むことができました。

開会の挨拶や体操ののち、京田辺キャンパスを出発します。前途は長いですが、指令という名目で参加者同士の交流を図る様々なアクティビティが提案されていて僕は感心しました。僕の班のリーダーは陽気な人だったので、それらの指令を順調にこなしつつ前へ前へと進んでいきました。その過程で、同志社生の生活実態を伺うことができたり、自分と共通の趣味が見つかったり、有益な食べ物情報が手に入ったりと、いろいろな学びと楽しみがありました。午前中の間は僕もおとなしく参加者たちの話を聞いていたのですが、この班のメンバーはどれも個性的でよくしゃべるので面白かったです。

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八幡市久御山町の間あたりにある流れ橋というところで一回目の休憩を取りました。お昼に食べたいものはと聞かれたので「肉」と書いたら写真を撮られました。その前後は木津川の河川敷をひたすら歩いていって、やがて久御山町のイオンでお昼休憩となりました。お昼ご飯に買ったオムハヤシが意外と美味しかったのと、リーダーがおごりとして振舞ってくれたオレンジのアイスバーが冷たくて心地よかったです。

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お昼からは班のメンバーチェンジがあって、また別の参加者と会話しながら歩くことになりました。そのうちの一人である一回生の彼とは、団地や街のつくりとかが好きということで会話が非常に弾み、巨椋池はこうだ向島ニュータウンはこうだ、竹田にはこういう土地があってなどといった話をしたら、相手もたいそう興味を持ってくれて熱心に聞いてくれたので、こちらも熱がこもって界隈の最悪な話などもしてしまいました。彼とは連絡先を交換しそこねたのですが後日またしゃべりたいですね。

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竹田を越えてからは午後からの班のリーダーの会員と色々しゃべりました。街中に入ると道が狭くなるので基本二列となり、必然的に隣の人とよく会話することになるのです。彼女は僕が参加するきっかけとなった案内の主である会員とよく通じているらしく、その周りで読書の機運が生じていた國分功一郎『中動態の世界』をはじめ、学問や大学生活の話を盛んに聞いてきました。それに応じて私もペラペラとこれまで勉強してきたものごとを語っていたのですが、それに対して彼女がすごい、すごいと首を振りつつ聞いてくれるので、喜びつつも自分が調子に乗ってあんまりしゃべりすぎないかと内心焦りました。参加者は同志社の学部生が多く、その中で京大のそれも修士ともなると一目置いて見られるわけですが、このようにして褒めそやされているとだんだんいい気になってくるわけで、こうして承認の過剰摂取状態から中毒状態に陥った人が若い後輩に悪行を働くのだなと思いつつ、自らを戒めるに至りました。僕はまだ理性のある人間で良かったです。

件の竹田を越えて、いよいよ京都も洛内に入ってきました。十条だかの河川敷の階段で休んだところから自由歩行となり、その際勘合貿易みたいに画像の片割れの相手を探すというアクティビティがあったのですが、左前方に座っている会員が自分と同じカズレーサーの写真を持っていたので秒で解決しました。そこからは河川敷をひたすら北上し、僕は鴨川右岸の団地群を見ながら一人で興奮していました。

そのあと五条公園で最後の休憩があり、僕は18時から始まっているCafe UGの卒業パーティーにどのタイミングで抜けていくかなどと考えながら歩いていたのですが、そこで一緒に歩きはじめた三回生の彼が、京都の歴史的な地理への関心が近いのもさることながら、僕自身にも大変興味を持ってくれて、自分が教えた屋台村に今度飲みに行きましょうと言うので参ってしまいました。やはり同志社の大学生ともなると興味関心が似通ってくるものですね。

そうこうしているうちに最後の御所構内を抜けて今出川キャンパスにたどり着きました。そこで彼がふと、今出川キャンパスには韓国人のツアー客がよく観光に来ていると言うものだから、僕はすぐにピンときて尹東柱のことだろうと返すとまさしくその通りだ、集合場所のすぐ近くに彼の碑があると言うので喜び勇んでついていくと、そこには尹東柱の碑が二つ佇んでいたのでした。

尹東柱というのは韓国(朝鮮)の詩人です。延禧専門学校で四年間学んだのち、同志社大学文学部に留学しで英文学を専攻していましたが、民族運動にまつわる過激な思想のかどで当時の警察に逮捕され、福岡刑務所における人体実験のもと30歳に満たぬ短い生涯を終えました。その間に書かれた数十の詩は清冽な言葉で綴られており、韓国をはじめとする青年の心を捉えつづけているが、私もまたそのうちの一人でありました。三年前の冬に海外派遣で短期留学した延世大学校は、まさしく彼が学んだ延禧専門学校の前身なのでした。

そのようなわけで、この折に彼の詩碑に立ち会ったのは僕としては感無量で、歩きづめで股関節が擦り切れたのも忘れて碑の前に立ち、参加者たちを差し置いてしばし感慨に浸りました。とはいえそれも束の間、すぐに集合場所に戻って閉会の挨拶と乾杯を耳にしたあと、明徳館の食堂の中でカレーを食べました。おかわりがたくさんあるので三杯も食べたところ後で後悔する羽目になりました。そこから様々な企画の結果発表がありましたが、午前中の使命の結果とやらが自分の班が案の定一位だったというので、ミニオンの容器に入ったお菓子詰めを景品としてもらいました。僕は容器だけいただきました。

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会員の人が急いで作成したスライドショーを見て一同感傷に浸ったのち、僕は駆け足で出町柳のRiversidecafeへと向かいました。時刻は21時を過ぎ、Cafe UGの閉店までは二時間を切っていたからです。

会場はすでに温まっており、例のパーティーグッズも発火したあとでした。なんでも、それに火を灯すとハッピバースデーソングが流れた後、ハスの花を模した形態が開き、中から人形が現れて、その花びらの上に蝋燭が灯されるというギミックのものだったそうで、動画を見せられましたが非常に面白い代物でした。そこで自分はパンと台湾ビールを飲み食いし、加えて魯味(lu wei)という台湾料理を食べました。滋味があり酒のつまみにちょうど良かったです。飲み足りなかったのでコウリャン酒を注文したところこれが58度の強烈な蒸留酒で、23時までに飲み終わりませんでした。さすがに眠かったのでこの辺で切り上げ、私はふらふらと家へと戻って行きました。風呂だけ浴びてクタクタになって床に就きました。

まとめ

イベントは意外と治安が良く、企画側の会員たちも工夫を凝らして盛り上げることに努め、参加者である同志社の若者たちはどれも気のいい学生で、非常に楽しく有意義な時間を過ごすことができました。来年はおそらく東京にいるので参加することはないと思うけれど、最後に京都の下道を歩き詰める経験ができて良かったです。色々の機会を与えてくれた友人がたに感謝します。

Scrapbox Drinkup #6 Kyoto に参加してワインの話をしました

あらすじ

昨日10月26日、Nota Inc. のオフィスで開催された、Scrapbox Drinkup #6 Kyoto に参加しました。IPA 柚子無碍をはじめとする美味しいものを食べたり飲んだりしながら、自身も飛び込みでLTをし、@rakusaiさんや@akiroomさんほかScrapboxの開発に携わっている方々と話せて有益かつ楽しかったです。

イベントの概要 

Scrapbox Drinkup はScrapboxのユーザーと開発者がビールを飲みながら交流できるイベントです。今回で第6回目になりますが、京都のそれもNota Inc. で開催するのは今回が初めてだったそうです。Nota Inc. のオフィスには友人の@pastakくんがTGIFを開く度に行っている気がしていて、今月行ってないなと思っていたら今回のイベントが事実上のTGIFになりました。

nota.connpass.com

参加登録はconpassから行いました。Scrapboxに参加者向けの共同プロジェクトがあり、資料がこちらに公開されているので、今回参加できなかった人も見ることができます。

scrapbox.io

イベント当日

雨がポツポツ降る中、烏丸今出川まで来てオフィスのあるビルの前に来ると、いつものように入口のドアにビラが掲示されていました。

19時ごろに到着し、待っているうちからビールが提供されはじめました。KMCの部員も5人くらいになりました。食べ物第一陣のたこ焼きが開放され、19時半にイベントが始まりました。

司会は@pastakくんで、彼が樽で仕入れてきたクラフトビールの紹介がなされました。西陣麦酒計画のIPA 柚子無碍というビールで、彼による触れ込み通り非常に口当たりがよく美味しかったです。

次に、Scrapbox開発チームから発表ということで、@shokaiさんからは新機能の紹介が、@rakusaiさんからはインターンシップについての報告がなされました。最近スマートフォンから編集するときに "Edit" という吹き出しが出るようになった気がしていたのは気のせいじゃなくて新たに追加された機能だったのか!とかいったことに驚きました。議論がScrapbox上で勝手に進むという話で、「人間の顔を見ると理性を失ってしまう」(だから対面では公正な議論ができない)という言葉がが面白かったです。

それからやはり開発チームである@daizplusさんによるリンクやハッシュの相互関係の視覚化に関する発表を聞いたのですが、これがすごかったです。Scrapboxのページ同士がリンクやハッシュといった関係づけごとに(しかも動的に)可視化され、それぞれのページの重要性や関係性がとてもよく理解できるようになっていました。自分ではまだ試していないですが、今後の(あと三ヶ月もないですが)研究における概念の整理と図式化に非常に役立つもののように感じられました。

その後は懇親会の中で各自が勝手にLTをするということで、まず@rashita2さんが自身の活用方法について発表されました。薄々そんな気がしていたのですが彼は自分も先日読んだ『Scrapbox情報整理術』著者の倉下忠憲さんで、「これ本で見たやつだ!」ってなりました。ご自身のブログで今回のイベントについて丁寧にまとめていらっしゃいます。

rashita.net

で、自分も実はLT用の資料を作っていたので発表をしました。みなさんScrapbox上でスイスイと発表資料を作っていて自分はGoogleスライドだったので恐縮だったんですけども、経緯の説明からScrapbox上での実演まで会場の反響は結構大きかったので嬉しかったです。Scrapboxでワインの知識と飲んだ体験を結びつけていこうという試みです。

scrapbox.io

そのあと途中からはてなでの仕事が終わって@tkzwtksさんと一緒に来た@hitode909さんが、先日のウェッパの裏でもScrapboxが使われていたという話を、それから@pastakくんがKMCにおけるScrapboxほかWikiやBlogサービスの(メチャクチャな)利用実態についての報告をしました。

そして発表をしたわたしはScrapbox特製グッズをもらいました。

マグカップに加えてマウスパッドまでいただけました。

その流れで@rakusaiさんや@akiroomさんとe-Sportsの話とかをしていて、自分は「e-Sports選手を傭兵として雇って代理戦争させるとディストピアになる」というランチで聞いた話をしようとしたのですが酔っていて支離滅裂になりました。

それから@akiroomさんたちから深圳の街がめっちゃいいという話を聞いていて、@nyanko15さんも中国語喋れるらしいし深圳絶対行きたいという話をしました。

あと意外なところだと@yuisekiさんとメディア論の話をし、@akiroomさんからもM. マクルーハンの『メディア論』を薦められるなど、研究の上でも学びがありました。

イベント自体は意外にも無難な時間に終了し、自分は翌朝病院に行きたかったので雨の中帰ったのですが、残ったメンバーはそのままサイゼリヤに行きさらに追いビールを飲みに行ったようです。やばいですね。

ともあれ美味しいビールが飲めてピザや唐揚げも食べられて楽しい空間でした。

 

【悲報】布団をコインランドリーで洗濯した結果wwwww

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羊毛の敷布団が縮んで小さくなりました。

きっかけ

私はハウスダストアレルギーです。いつもくしゃみや体のかゆみに苦しんでいます。

ある日、布団に横になって眠るときに体が痒くなっている気がして、特段不衛生にしているわけではないのですがダニはどの家庭の布団や布製品にも棲息しているので、これが気になって眠れなくなりました。以前から天日に干したり掃除機で吸ったりもしていたのですが、どうやら生きているダニには効果がないらしく、これらを殺すには高温で乾燥させるか薬剤を使うかしかない、とのことでした。

とにかく気が狂いそうだったので、すぐにドラッグストアでダニアーススプレーを購入し、布団の下の吸湿マットに振りかけてから、近所の比較的新しいコインランドリーに布団三枚を順次運んで行きました。

コインランドリー

初めての利用だったのですが、コインランドリーは体験が良かったです。室内は土足禁止となっており、マシンから除菌されたスリッパが出てきます。洗濯に必要なものはだいたい揃ってあり、夜にはルンバが勝手に掃除してくれるようでした。

洗濯乾燥機と乾燥機など、いくつかの種類の大型機械があって、どれに入れようか、そもそと自分の布団は洗濯してもよいものなのかと思っていると、やはり同じく初めての利用であったおっさんに色々教えていたおっさん達が、洗剤は勝手に入れてくれるのでいらない、洗濯と乾燥は別にしたほうがよい、など有益な情報を提供してくれました。同じことを家族に話したら布団は洗濯するものではないとか天日干しで十分とか適当なこと言われたのとは大違いでした。値段は一度の洗濯で800円から1200円くらいして、思いのほか高かったです。

それで、敷布団二枚と掛布団一枚を順次洗濯・乾燥しました。敷布団は一枚がポリエステル80%と綿20%、もう一枚が後で確認すると羊毛100%だったみたいで、掛布団は羽毛です。それらを閉店までに乾燥まで済ませて、再び背中にくくりつけて自転車で家まで持ち運びました。布団からは「お日さまのにおい」がしました。

この晩はとりあえず下の敷布団と掛布団は乾いてそうで、夜も寒かったのでこれらに挟まって寝ました。体が痒くならなくて良かったです。もう一枚の敷布団はまだ乾ききってなさそうだったので、翌日もう一度乾燥させることにしました。

翌日

午後、ふたたび敷布団を乾燥機に放り込んで30分乾燥させ、自宅に運んで帰りました。この時点でなんか固くなっており、型崩れしたかなと不安な気持ちになっていました。家に帰り、部屋で布団カバーをつけていると明らかに幅が余ります。ガバガバです。ここに布団が縮んだことが明らかになりました。もう一枚の敷布団の上に重ねてみるとその差は歴然、型崩れどころか完全に縮こまってしまっています。

調べたところ、その布団は羊毛でできていて、この羊毛というのは洗ったり乾燥させたりすると縮んでしまう性質らしく、しかも元には戻らないそうです。残念。

仕方がないので今後はこの硬くでこぼこした布団の上でしばらく寝て、臥薪嘗胆をしたいと思います。

学び

今回の学びは、羊毛製の布団(綿布団も)をコインランドリーで選択すると1割くらい縮んで使い物にならなくなる、でした。みなさんも布団をコインランドリーで選択するときは表示をちゃんと読むようにしましょう。

結婚パーティーで婚姻にまつわる語源について話した

先日、バイト先のチームメンバーである@hitode909さんと@corinyouさんの結婚パーティー「ウェッパ」に参加しました。

3次会のLTで@hitode909さんとの思い出を発表するシーンがあり、僕は豆知識的なものを披露しようと思って結婚の言葉や漢字の話をしたのですが、思ったより受けて良かったので、ここに台本つきで公開しておこうと思います。

(台本)

こんばんは。

シロイです。

誰、となると思うんですが、 

hitodeさんのチームメンバーです。非エンジニアリングまわりのことをしています。

最近やったこととしては、LINEで飲み会の話をすると、地名から勝手に飲み会の場所を提案してくれるbotを作ったりだとか、

「#つくりおき」というブログでトマトの雑マリネという記事を書いたりしました。

あとこれは去年の11月ごろの写真で、右が僕です。左は向こうにいる桐生あんずです。ハロウィンでもこの格好をして、下のDEN-ENでhitodeさんたちと飲んでいたんですが泥酔してしまい、ミネムラコーヒーさんにタクシーで家まで送ってもらう羽目になりました。

さて本題ですが、

僕は文字と言語が大好きです。

それで、まずは結婚の婚という漢字の由来について考えてみたいんですね。

婚という字は女に昏(たそがれ)と書きますけど、

これは説文解字によると、女はまあいいんですが、昏というのは女が陰陽五行説で陰に属するということのほかに、黄昏時に結婚式をどうもやっていたということだそうで、そこから来ているらしいです。

ただ婚には別の字もありまして、これはどうなっているかと言いますと、傘のようなものを被った女の人が、嫁に入る家に手を引かれて歩いて泣いている、ということになるそうで、昔の人の結婚は必ずしも幸せではなかったようですね。

今度は日本語だとどうかと言いますと、

婚という字には「よばう」という読み方がありまして、

これは「呼ぶ」という語を継続して行う、つまり求婚するという意味なんですが、よく「夜這い」というような意味は元々はなくて、後世の人々による後付けなんですね。

で結婚を表す古語には色々ありまして、

見る、見ゆ、逢ふ、合はす、配る、預く、言ひ寄る、住む、添ふ、枕く、目合ふ、

といったようにこれらの語彙はだいたい性交を含意しています。

見る、という語彙にしてもこの意味が三番目に出てくるわけですね。

で、見るという言葉には面白い話がありまして、

四年前くらいに茨城県の方で土器が出土したんですけれども、それに国字が刻まれていると。

で、ここなんですが、どういう漢字が書いてあるかというと、

こういう、見ると見るを逆さまにして組み合わせたような漢字なんですね。

これは「ヒルクナカヒ」と読んで、やっぱり男女の交合を表す字だったそうです。

この「クナガフ」という言葉にしても、やはり結婚の婚という字が当てられていますが、同様の意味で使われていたそうですね。

ところで見るといえば、

うちのチームには「みるみる会」というのがありまして、

まあみるみるということはとても大事なのであります。

ということなので、お二方には是非とも素敵なみるみるライフを送ってほしいと思います。

以上です、ありがとうございました。

(台本おわり)

@hitode909さん@corinyouさん本当におめでとうございます!!!!

LINE BOOT AWARDSの学生ハッカソンに参加して半日で飲み会提案botを作った話

あらすじ

9月29日に京都で開催されたLINE BOOT AWARDSの学生向けハッカソンに参加し、そこでLINE Messaging APIを使ったプログラムをチームで制作して、「飲み会提案bot」というアプリケーションをローンチしました。惜しくも賞は逃しましたがショートコントの受けは良く、パーティーで10人くらいと連絡先を交換しました。

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linedev.connpass.com

コードと技術記事

コードはGitHubで、技術記事はQiitaで公開しています。

github.com

qiita.com

前日

開催前日、接近する台風24号の影響により、土日の2日間が予定されていた期日が1Dayに変更される旨がメールで通知されました。それに伴い、資料を参考にLINE Botおよびスキルのハンズオンを終えて来るようにとの指示が下りました。そんな、と思いつつ夜中の26時くらいに一時間くらいかけて書いてある内容を終えました。Herokuなどの設定が済んでいたこともあり、デプロイするところまで簡単にできました。

 

オープニング〜アイデアソン

雨の中、20〜30人の学生が会場を訪れました。おもむろにオープニングが始まったのでプロジェクションを見ていました。

イベントについてと技術面の簡単な紹介が終わった後、個人参加者は近くの参加者と4人程度のグループを作り、アイデアソンということでマンダラチャートが書かれたシートが参加者に配られました。マンダラチャートはプロ野球の大谷選手が目標達成ツールとして用いていたことで以前話題となりましたが、マンダラートという名前で発想法としても使われているようです。

swingroot.com

写真を撮ってくるのを忘れましたが、僕は真ん中に「酒」と書いて単語を色々書き込みました。その中からキーワードを一つ選んで、それに関するアイデアを1枚のスライドに落とし込もうという流れになりました。当初から飲み会に関する何かを作ろうと考えていたので、僕は飲み会に関するスライドを2枚書きました。その後、他の参加者のスライドを見て回り、よさそうなアイデアには星をつけるというのをやったところ、飲み会提案botというアイデアに9つの星がつきました。

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僕としては他方のアイデアを採用したかったのですが、このあと星が多い上位5つのアイデアを基にチーム編成がなされたので、その案はとりあえず引っ込めることにしました。メンバーは意外と集まらなくて、結局2人で制作することになりました。

制作

チームメイトは学部二回のPythonスクレイピングとか機械学習やりたいっていう勢いのある子で、APIで居酒屋情報を取得するという今回の目的にとってはちょうどよい組み合わせでした(彼自身はAPIスクレイピングを混同していたようですが)。居酒屋の情報はぐるなびが提供しているAPIで取得できることはすぐにわかったので、彼はそれを利用して居酒屋情報を取得するプログラムをさっそく書き始め、自分はとりあえずbotが動くようにチャネル(LINE@アカウント)の作成とサンプルbotの実装を進めました。

正午になるとランチとして弁当とお茶が提供されました。3種類あったのですが一番人気の焼肉とんかつ弁当は秒でなくなりました。後でTwitterハッシュタグ #linebootawards 見たら画像あげてる人みんな焼肉とんかつ弁当で笑った。

チームメイトの彼は速攻で食べ終わってプログラムの続きを考えていたので、自分もどんなbotにするか考えていたら、テクニカルエヴァンジェリストの立花翔さんからbotが送るメッセージの便利なテンプレ作成サイト(繁体字)を教えてもらいました。

その後わりと我々のチームは首尾よく作業が進む感じになり、LINEのサポートの人たちに助けを求める機会がなかったのはひょっとするともったいなかったかもしれません。ともかく僕はQiitaの記事とか参考にHerokuにデプロイしてみたらbotとしてちゃんと動くようになり、ひとまず完成への見通しがつきました。

その次にメッセージ内容の変更に着手しました。Flaskを使って書かれているプログラムを触るのは初めてだったのですが、コード眺めていたらどの箇所に当たるかがわかったので書き換えてみたらできました。この箇所にAPI叩いて出てきた結果を投げればメッセージとして送信してくれることになります。

で、チームメイトの彼の方はというとデータをJSON改めCSV形式に落とし込むところまでは実装できたものの、APIに投げる対象が地区名ではなくそれに対応する数字4桁のコードではないといけないということで、色々迷いながら地区名とコードの辞書を作る形で実現していました。その結果いくつかの地区にのみ対応という形になったのですが、後でぐるなびAPI一覧見てみたら「エリアSマスタAPI」というのを使うとこのコードを得られたみたいです。

api.gnavi.co.jp

これらのコードを統合するためにGitHubディレクトリをアップロードして共同開発する形になったのですが、お互い初めてだったので彼がクローンできるまでに結構時間がかかりました。その間に僕はClovaスキルの方でもできないかなとインテントを作成したりしていましたが結局こちらは間に合いませんでした。そんなこんなで彼が書いたコードを自分のスクリプトに乗っけて変数でつなぎ合わせ、同時に自分が書きかけていたメッセージ内容から条件となる文言を拾って地区名を取り出すスクリプトを加え、こんなんで果たして動くのかなと思いつつHerokuに再びデプロイしました。最初は案の定動きませんでした。しかし条件を緩くしていくと居酒屋データ自体はちゃんと取得できており、リストをそのまま吐かせるとちゃんとbotが動くことがわかったので、問題はどうやって居酒屋の情報を1件ずつ取り出すかだなということになり、上から順に取り出すという当初の案を改めてランダムに1件取り出す形に書き換えたところ、数回の試行を経て見事期待通りに動きました。この時には思わずチームメイトと喝采を上げてハイタッチしました。

終了30分前にここまでたどり着いたので、その後の時間は二人ともプログラムの改善に取り組む代わりにTwitterなどでの広報に勤しんでいたようです。

プレゼン、パーティー、結果発表

作業時間が終わり、各チームが作成したbotやスキルのプレゼンが順次なされました。半日という短い開発期間にも関わらず、ほとんどのチームが形になっていたのでびっくりしました。やはりClovaスキルを作ったチームが多かった印象です。スライドがいつ作ったんだという感じによく準備されていましたが、実演は案の定Clovaの聞き取りが悪かったりしていずれのチームももたついていました。自分のチームはスライド作る余裕ないなと思ったので、適当に寸劇やることを考えて発表中にその台本を書き、チームメイトと共有しました。

ちなみにあみだくじの結果、自分たちのチームは最後の発表でした。我々も他に漏れず開始前に機器の接続でもたつきましたが、ショートコントを宣言してからはノリと勢いでなんとかなりました。

京産大の安田豊さんのエキシビジョンとサポーターズの紹介の後、パーティーが始まってピザと酒類などが出てきました。前日もピザとビールを飲んだので二日連続の優勝です。期待通りショートコントのウケは良くて、たまたま参加していた同じはてなのアルバイトの学生や、立命や京造の学生と会話したり、名刺を交換したりしました。

ひとしきりピザを食べた後に結果発表がありました。何のチームが受賞したのか忘れてしまいましたが、自分たちのチームが惜しくも賞を逃したのは確かなようです。賞というよりClovaを狙っていたので残念でした。この思いはLINE BOOT AWARDSで1000万を獲ることで果たしたいと思います。

さてパーティーは終わり、ひとしきりTwitterアカウントを交換し、解散後も駅まで参加者と一緒に歩いていると共通の知り合いがいることが判明したりして面白かったです。あとで確認したらTwitterFacebook合わせて10人くらい連絡先が増えたようです。

感想

ハッカソンは実質初めての参加で、数年前にヤフーのに参加してみたはいいものの自分ではコード書けないしアイデアに賛同してくれる参加者もいないしで、とりあえず他のチームに入ったものの途中で抜けたということがありました(ちなみにその時の自分のアイデアがアプリになったものが最近Twittterのプロモーションで流れてきてショックでした)。今回もLINE bot全く作ったことない状況で作ることになり、ちゃんとコードが書けるのか最初はかなり不安だったのですが、botが動くところまでは割とすんなりいき、コードもサンプル眺めてたらそれなりに理解でき、自分でも意外と書けたのでびっくりしました。Clovaスキルを作るのはもっと簡単だったはずで、LINEのような会社がこうした開発環境を提供しているのは大事なことだなあと感じました。

今回は半日でそれなりに動くbotを開発し、ローンチの後LINE BOOT AWARDSにもそのまま応募してしまいましたが、LINE botやClovaスキルがわりあい簡単に作れてしまうことがわかったので、個人的にも便利なサービスを作っていきたいと思いました。またLINE BOOT AWARDSは10月10日まで応募できるので、今回採用しなかったアイデアを締切日までに実現し、1000万円と言わず5000兆円を狙って応募してみようと思います。

PyCon JP 2018 に参加しました

あらすじ

こんばんは、シロイです。9月17日から18日にかけて開催された、PyCon JP 2018のカンファレンスに参加しました。去年はじめてRubyKaigiに参加した id:kiryuanzu がバリバリ成長しているのを見て、自分もそういうイベントに参加しておかないとなと思い、プログラミング言語の中でも付き合いの長いPythonのカンファに参加しました。そこで勉強会で一緒にRailsPythonを書いている id:fukuso_sutaro を誘ったところ、当初は予定があるとのことだったがこちらに参加した方が都合が良いとのことで、彼も参加することになりました。前日と前々日にはそれぞれチュートリアルとスプリントも行われていたのですが、日曜日の予定が確定しなかったため、自分はカンファレンスの部からの参加となりました。日曜日に京都を夜行バスで出て、月曜日の朝に川崎駅に到着、そこから京急蒲田駅の近くにある大田区産業プラザPiOに向かいました。

pycon.jp

1日目

午前

Argentina in Python: community, dreams, travels and learning | Kaufmann Manuel

キーノートはKaufmann Manuel氏によるパッション溢れる講演で、コードを書いてコミュニティ作っていきたい!という気持ちになりました。

 

東大松尾研流 実践的AI人材育成法 | 中山 浩太郎

招待講演は東大松尾研の人のAIに関する講演。これに関しては聴講者のターゲットが外れていたというか、機械学習について数冊本を読んだ程度の自分でも知っている内容が大半だったし、PyCon JPでやる内容ではなかったかな…という感想がTwitterでのハッシュタグでも多数でした。

 

ランチタイム

ランチはお弁当が出ました。洋食の大きめの弁当が早めになくなっていました。ランチ後に結構余っていたので余分に取って食べました。

 

ジョブフェア

あと1日目にはランチタイムにジョブフェアというのがやっていて、スポンサー企業の社員がPythonや働き方について色々話すのを聞きました。

 

午後

実践・競馬データサイエンス | 貫井 駿

最近は競馬に興味があるのでこれ聞きたかったんですが、会場を間違えていて開始後に移動したら満員状態でした。id:fukuso_sutaro となんとか割り込んで床に座って聞いていましたが、ここまで使えるようになるとお金になるよな〜と思いました。

logmi.jp

 

Building Maintainable Python Web App using Flask | Wonder Chang

Flask使えるようになろうと思って聞きに行ったんですが、後半はメンテナンスの話で技術っぽい内容ではなかったです。

 

Pythonで時系列のデータを分析してみよう。 | Tatsuya Kobayashi

登壇者がギークラボ長野の人でした。ここで初めてJupyterのことを知ったんですが、なるほどデータ分析の資料作りに使えそうと思いました。コードが示されていたので自分もやってみようと思ったんですが、二つ目の段階でエラーが出てつまずいたんで実際は難しいなあと感じました。

www.slideshare.net

 

Pythonで解く大学入試数学 | 新井 正貴

数学の教職免許が取れる人間なので面白いと思い聞きに行きました。高校数学の問題を題材にNumPyやSciPyの取り扱い方が勉強できて有意義でした。

slideship.com

github.com

 

パーティーとその後

この日はずっと id:fukuso_sutaro と一緒で、パーティーでも同じテーブルにずっといたんですが、彼のことを知っている人間が全くいないことに、彼自身とても驚いていました。名刺の「映像作家」という肩書きがナチュラルに受け入れられていて、Python界隈治安がいいな〜と感じました。デカいチーズをくり抜いたところにパスタ入れて作るカルボナーラが美味しかったです。外は雨が降っていて、京急蒲田駅から品川駅を目指したんですが、間違って羽田国際空港の方に向かってしまい、しかもそこから戻るには改札を一度出なければいけなかったりで、東京の路線は大変だな〜と思いました。

この日と翌日の版は渋谷にある渋家というシェアハウスに泊まりました。サクラ荘とは全く違ったカルチャーだったので戸惑いましたが、シャワーが浴びられ布団で眠れたので良かったです。スマブラが共通言語で助かりました。

2日目

午前

Pythonでやってみた」:広がるプログラミングの愉しみ | 磯 蘭水

登壇者の磯蘭水氏は日本におけるPythonの古参みたいな人らしく、Infoseekの検索システム作ったのこの人だったのか!と聴衆が驚いていました。シンセの話を下敷きにして、プログラミングの考え方が要領よく提示されており、かなり説得力のある講演でした。

 

niconicoにおけるコンテンツレコメンドの取り組み | 大元 司

ドワンゴの研究所の人のレコメンドに関する講演でした。やってることは企業だからといって特別なものではなく、理論に基づいて地道にやっているんだなあという学びを得ました。ただ僕はニコニコ動画では淫夢関連を見ることが多いですが、あれは運営の作為なのかどうなのか全然関係ない動画がレコメンドされたりします。

 

午後

REST API に疲れたあなたへ贈る GraphQL 入門

…が聞きたかったんですが会場が満員で締め出されており、リモートで聞きかじる程度になりました。なので内容はよく覚えていません。

 

おやつタイム

前日はおやつにありつけなかったんですがこの日は間に合いました。パウンドケーキみたいなやつを食べられたので良かったです。

 

1次元畳み込みフィルターを利用した音楽データのオートエンコーダ | 新倉 涼太

これはなかなか面白い試みだと思いました。深層学習を使って音楽データの特徴を抽出し、それを使ってエンコード(圧縮)・デコード(復元)ができないかという取り組みです。実用的にはまだまだといったところですが、Pythonは音楽データも生成できるという学びがありました。

 

Pythonで始めるウェブスクレイピング実践入門 | 田中 慎太郎

最後はウェブスクレイピングの講演を聞きました。実践とありますが、どちらかというと概論といった感じで、色々なライブラリがあるけど同じことがこのような実装でできる…という内容でした。Jupyterのノートが資料として示されていたので家に帰って復習しました。

 

speakerdeck.com

 

LT、クロージング

クロージングの前にLTとして、様々な人たちのプレゼンテーションを聞きました。面白いなと思ったのは、深層学習を使った画像認識で麻雀の点数計算をさせるやつです。今度LINE bot作りそうな雰囲気あるので、参考にしたいなという気持ちになりました。

www.slideshare.net

クロージングでは、聞きに行こうか迷っていたラズパイでドローン制御する講演で使われていたドローンを用いて、会場の写真を撮影しました。僕はそのドローンのカメラに対してスマートフォンのカメラを向けて撮影しました。

東京はこの日も雨がぱらついていましたが、JR蒲田駅まで二人で歩いて帰りました。

 

スポンサー企業たち

スポンサー企業としては、仮想通貨取引所Zaifテックビューロを筆頭に、メルカリ、GROOVE X、アイリッジ、SQUEEZE、Gandi.net、スカラコミュニケーションズ、Smart Trade、アイシン精機、いい生活などの企業が、主要なスポンサーとしてブースを構えていました。

テックビューロさんは今イケイケドンドンで、会期の翌日にZaifがハッキング被害を受けて70億円相当の仮想通貨が流出との報道がありましたけど、id:niwatako さんの仮想通貨悲喜こもごもみたいな話を耳にしているので、技術的には面白い分野だと思います。メルカリではメルペイという子会社が仮想通貨事業をやっていますね。

techbureau.jp

about.mercari.com

スカラコミュニケーションズさんといい生活さんは、我々が学生ということで話をよく聞いてくださったと記憶しています。それぞれタンブラーと、LEDライトとかコースターとかをいただきました。

scala-com.jp

www.e-seikatsu.info

ほか、アンケートに答えてSmart TradeさんからはQRコードが印字されたどら焼きを、アイリッジさんからはコーヒー豆を、アイシン精機さんからはミニカーを、またGROOVE Xさん、SQUEEZEさん、Gandi.netさんからもそれぞれステッカーをいただきました。もう少し話を聞きたかった企業もありましたが、話題のツテがわからずそこまで繋がらなかった印象があります。

「理学研究科に来ているのよりずっといい求人がある」と、id:fukuso_sutaro がいたく感心していました。ちなみに私も現在絶賛求職中です。当エントリをご覧になっている人事部の皆さん、ご連絡お待ちしております

 

ふりかえり

  • 当日、講演終わった後に要約をシュッとツイートしたり、資料のURLが示されたところで登壇者のツイートをシュッとRTしておいたのは大正解。後でエントリにまとめる手間が省ける。
  • 名刺はやっぱり作っておいた方がよかった。id:fukuso_sutaro は直前に秒で作った名刺を用意してきていて、結構活躍しているみたいだった。
  • 先の id:fukuso_sutaro への反応を見てもわかるように、PyConというコミュニティは、我々が「インターネット」として想定している界隈とはかなり異質な、いたって「まっとうな」ものらしいことがわかった。RubyKaigiなどはまた雰囲気が違っているのだろうか。Ruby京都大学とすれば、Python大阪大学みたいなイメージである。
  • id:fukuso_sutaro が一日目解散した後「パイコン正直めちゃくちゃ楽しい」「id:silloi さんいて本当に良かった」とツイートしていて、息子を久々に遠くへ連れ出した親みたいな感情になってしまった。彼を誘って本当に良かったと思った。
  • 今年までは学生なので、学生料金で安く参加することができたが、来年からはそうはいかないだろう。こうしたイベントに経費で参加できる企業に就職したら参加したいし、LTや講演などもできるようになりたい。

京都大学サマーデザインスクールに参加したら実質上のインターンだった

まとめ

京都大学サマーデザインスクール2018に参加しました。フレームワークや発想手法を使ったアイデア立案をしたりできると期待していて、実際それはある程度達成できたんですが、テーマの制約がシビアだったので自由な発想の余地がそれほどなく、そういう意味ではあまり面白くなかったです。言い方を換えれば企業のインターンシップみたいな内容だったので、業界研究としていい勉強にはなりました。

参加する前

京都大学サマーデザインスクール(以下sds)は数年前からポスターを見るたび参加してみたいと思っていて、でも申込しようか迷っていると定員がすぐに埋まって締め切られてしまうといった様子だったのだけど、大学にいるのも今年が最後と思って残りの一枠に申込したところ、予算が決まっているプログラムとしてはこちらも今年が最後だったとのこと。

残りの一枠というのは鉄道車両のメンテナンスというキラキラ大学生とはかけ離れたテーマで、チームメンバーになった学生も工学部や工学研究科の所属だった。自分はアルバイトでWebサービスの運営管理に近いことをやっているのでソフトに限らずハードの保守やメンテナンスにも関心があったことと、デザイン手法を使って新しいものを作り上げようといった趣旨ではなくフレームワークを利用して問題解決しようという目的がはっきりしたテーマだったことから、こちらを選んだのは妥当な選択だった。車両所見学ができるのも自分にとってアピールポイントだった。

一日目

初日は午前中に問題解決手法についてのちょっとしたレクチャーがあり、午後からは吹田に移動して社員の方と車両所を見学した。手法はTRIZ(トリーズ)というもので、ソ連の工学者が過去の発明や開発の事例を調査分類して、一連の解決手法として構成したもの。なかでも「40の発明原理」というのがいかにも工学然としていて、また参考書籍がこれらをうまくデザインしていて興味を惹かれた。

トリーズ(TRIZ)の発明原理40
 

 午後からの車両所見学のために、吹田まで電車で移動する。鉄道会社はインターンとかでも交通費出してくれるといったことは基本ないらしく、我々の移動費用も自費なら社員の人も自腹で切符を買っていた。最寄りの駅に到着し、しばらく線路沿いに歩いたら大きな敷地の車両所がある。

車両所ではブルーカラーの服装をした作業員が所内の説明をしてくれたり、作業風景を見せてくれたりした。僕は電車が特に好きというわけではないが、工場は好きなので巨大な構造物を見てテンションが上がっていた。作業は機械化ができないために作業員が人力でやっており大変そうだった。所内は案の定男しかいない世界だと思っていたら帰り際に職員室の入り口で美人を見かけたので趣を感じた。

二日目

二日目は午前中にとりあえず付箋に現状の問題点やその対策などを書き出して整理するという作業をやった。似たような作業をどこもやっていたがこれはKJ法という理解で会っていると思っていて、一度ちゃんとやる必要があると感じていたので今回これができて良かった。一般に人は個々の相関関係を見つけ出すといった操作は積極的にするけれども、それらをまとめ上げた上位カテゴリに名前をつけるということはあんまりできないと思っていて、自分が率先してそれらに名前を与えていたら他のメンバーが語りの中にその名前を早速採用するので面白かった。考えに取っ手をつけるとはまさしくこのことだなと思った。

 

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さて、そうしてひとまずはまとまりを見せた概念図を午後からフレームワークである因果関係の図式に落としこもうとしたところで、新たに社員がもう一人来て概念図の要素にケチをつけていきメチャクチャになった。一日見学しただけの我々より現場に詳しいのは分かるしツッコミどころが多いのも理解できるが、ある程度方向づけられていた議論に水を差されたのみならず午前中の成果が役に立たないような形でまた同じ作業をやり直す羽目になったという気持ちが生まれ、内心憤りを感じた。だいいち学生主体のイベントなのだからそこは距離を置いていてほしいし、企業でもこういう風に上の立場の者が横槍を入れてくるという形でプロセスがダメになるということは往往にしてあるのだろうなと思われた。対してもう一人の社員の方は適度な距離を保っており好印象だった。

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時間は掛かったがとりあえず因果関係の図式はそれなりに形になり、それらから導き出される発想原理に従っていくつかのアイデアが出された。それらの評価までやって、資料は翌日作ろうということになった。図表資料のクオリティを他のメンバーに期待できないと思ったので夜のうちにPowerPointで作成しようかとも思ったが、読書会から帰ってくると疲れてそのまま寝てしまった。

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三日目

最終日は午前中のうちにポスター発表の準備をして、午後にその発表会をするというスケジュールだった。資料作成はいちおう役割分担するけどそれほどうまくいくはずもなく、デザインも統一する余裕がなかったのはもちろんのこと作業の早いメンバーが独自規格を採用しだしたりして案の定まとまりのないものになった(洗い出しの時にも規格が統一されていないことが問題の一要因という話をしていたのでは)。とにかく時間までに模造紙に貼るスライドを印刷し、それなりに配置して準備が終わった。

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口頭での発表は詳しくはポスターを見よって感じで適当に流して、ポスター発表のセッションでは前半は鉄道オタクのメンバーがいい感じに回してくれたらしい。その間自分は他のポスターを見て回ったり知人友人と会話したりした。実は一日目には桂行きのバスの中で中国・西安への海外派遣で一緒だった参加者の友人と、二日目にはその晩の読書会で一緒の知人と、三日目には大学院に入学した際の生協イベント後に教授のもと一緒に飲んだ知人などと再会するといったイベントがあり、改めて人間の関心が似通うことの奇妙さを感じていた。テーマは協賛企業の色合いが強く出ていて、電通の「たしなみ」や「おもてなし」に対し博報堂が「恋に落ちる」ことをテーマにしていたので、「たしなみって女子高や女子大の規範的な教育内容として生まれた性差別的な概念だということは知っていますか」みたいなイケズなコメントをしたりしていた。概してやはり実現可能性はともかくアイデアというかデザインを提案していこうみたいなスタンスの発表が多く、ただもう現実に即した解決法を示した我々のポスター発表は際立っていたと思う。三菱電機の人工太陽がエネルギーの根源となった世界みたいなのがSFっぽくて面白かった。後半は替わって発表を担当したけど大勢に説明するよりは一人二人と対話するといった感じでできて良かった。コーヒーブレイクに阿闍梨餅が出てきて嬉しかったが、コーヒーを飲みすぎて気持ち悪くなった。

それが終わるとリフレクションの時間があり、いろいろと思うところを書いたが意見共有の機会はなかった。そのあと結果発表があり三位以上のテーマが発表され、いずれも自分は関心なくて聞いていない発表のものだった。一位になったのは不便益の研究で有名な教授のところで出来レースだなと思った。

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閉会の後には懇親会があり、酒と料理を口にすることができる。ちゃんとした洋食が出てくるなあと思ったら数年前に閉店し十月に再開するという「まどい」による出店だった。あんまり食べたつもりも飲んだつもりもないが、いろいろと疲れが溜まっていたのか途中から食欲がなくなってきた。発表が聞けなかったメンバーに関心あるテーマの参加学生を引き合わせたりしていると、その者同士が実は知り合いだったみたいな出来事があり世間は狭いなと思った。

帰りは連絡バスが途絶えていたため、電車とバスを乗り継いで帰った。

振り返り

サマーデザインスクールという名前がついているが、少なくとも実施者や協賛者として企業がそれぞれついているテーマに関しては、デザイン手法といってもせいぜい発想法とかフレームワーク使ったりするくらいで、あんまりデザイン(設計)みたいなところまで十分にできているチームは多くなかった気がする。せいぜい自分のチームのようにいくつか打ち手の立案をするか、問題の整理どまりではなかったのだろうか。それは三日間といえども準備時間を除けば実質二日間で現状分析から概念整理して解決策をパッケージとしてまとめるのがいかに難しいかということでもある。自分は最初からそうだと思っていたが結果的にはプレゼンテーションが上手いチームが成果を収めるということになるのである。

ところで二日目に読書会が一緒の知人とバスを待っている間しゃべっていたのだが、僕はチームワークしんどくて一人で作業やった方がずっといいみたいな話をすると、自分はチームワークをするのが楽しいみたいなことを言っていて、そっちが一般的な感想なのだろうかなと思った。多少ともチームをまとめようとするなら、それがいかにコストのかかることか理解されると思うのだけど。またチームメンバーの院生の彼が社員の人に詰められていて、かわいそうだと思って休憩時間に労うような声をかけたところ、自分の考えがまだまだ及ばないとかめっちゃ謙虚なこと言ってて真面目だなあと思った。そりゃまあ工学徒は真面目でないととてもじゃないがやってられないよな。

そんな感じで、手を動かして問題を考えたり、人間としゃべったりすることができ田という点では参加して良かったなと思います。でも今の自分にはもっとやるべきことがあったよな、とかえって奮起せられました。